二系統の南葛八十八ヶ所霊場

旧南葛飾郡に開かれた二系統の南葛八十八ヶ所を実際に回っています。

見分け方早分かり
いろは大師(北回り)|大心講|大正14年|一番は奥戸・善紹寺
南回り|弘山講|明治43年ごろ|一番は東小松川・善照寺
「名称について」も読む

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石川地内(番外・荒行虫除大師)

【札所番号】
いろは大師:番外 荒行虫除大師

【札所名】石川地内

【所在地】

旧地名 葛飾区諏訪野町稲荷山
現在の地名 葛飾高砂1-13

【御詠歌(いろは大師)】
あかつきの みそらくもらぬ たかのやま ふりさけみれば 月ぞ残れる

【いろは大師、次への順路】
二番の東覚寺へ七丁
 
 『御詠歌集』は、たぶん送り大師という行事に参加する講の人たちのために作られた本なので、札所の場所はおおざっぱにしか書かれていません。行事の際は先達と呼ばれるリーダーがいて、次はこっちですよと連れていってくれるでしょうから。

 札所がお寺だとわかりやすいんですが、ここみたいに「諏訪野町稲荷山(高砂一丁目)石川地内」みたいに書いてあると首をひねってしまいます。石川さんの私有地内ってことでしょうから、そもそも今もあるのかどうか…

 でも、もし今もあって、道行く人の参拝を拒んでいないとしたら…

 旧諏訪野町あたりまで歩いて来た時、わたしは持っていたスマホポケモンGOを起動しました。もしまだ大師堂が残っているなら、きっとポケストになっていると思ったんです。

 するとどうでしょう。わたしが知らなかった地蔵堂がみつかりました。ポケストの名前は申請者が適当につけているので正式な呼び名とは限りませんが、子連れ地蔵という名前で登録されていました。

ポケスト「子連れ地蔵」のスクリーンショット

 どこが子連れやねんって感じですけど…だって地蔵なのは左だけで、右側のって昔の船形墓石だし。こういう形で何かの記念碑になってる場合もありますが、塩でこすられたみたいに磨耗しているから、たぶん人々に慕われていたお坊さんの墓石とか、そういうやつじゃないのかな(もう文字が読めないからわからないけどね^-^;)。

 とにかくこれは有力情報です。寺でない場所の札所は、こういう路辺の地蔵堂境内にあることが多いんです。さっそくその場所に向かってみました。

地蔵堂遠景
地蔵堂

 なんでかgoogle地図にも載ってないんですが、たしかに地蔵堂があります。新中川にかかる高砂諏訪野橋(とgoogle地図に書いてある)の西詰めにありました。

 この地蔵堂に向かって左奥に、大師像発見! やったー!! ありがとう、ポケモンGO、ありがとう、トレーナーたちよ! >今週のお題「感謝したいこと」

南葛いろは大師番外大師像・荒行虫除大師
台座には「荒行虫除大師」と刻まれている。

 ほかの札所では、大師像は番号の台座の上に座っているのですが、ここのは旅姿で立っています。少し読みにくいですが、台座には荒行虫除大師と書いてあるみたいです。その台座がさらにごつごつした熔岩のようなものに据え付けられているのですが、岩に石版がはめこまれていて、消えかけた文字で「南葛八十八ヶ所」と世話人のみなさんの名前が刻まれているようです。

 こちらの札所はまだお世話する人がちゃんといて、平成のいつごろかに大師像の上に屋根をつける工事をしたと書いてありました(薄暗くて貼り紙が写らなかったのでうろおぼえですが)。

 番外も含めれば九十ヶ所以上ありますから、札所の保存状況は場所によってまちまちで、地元の奉賛会などで今もお堂のお世話をしてくださってる札所もあれば、半ば打ち捨てられたような感じになっている札所もあります。

 私有地であるなら、内心ではもう片づけてしまいたいなと思っている家もあるかもしれませんが、道行く人の参拝を拒まず残してくださって本当にありがとうございます。わたしは必ずしも信仰心だけで札所をめぐっているわけではありませんが、こうして地元の霊場を回っているうちに、昔のことを調べたり、今はもうない町名が町会や神社の名前として残っている事などがわかって、毎日がとても楽しいです。

 それに、今回はポケモンGOのおかげでこの札所にたどり着けました。自分の町に興味を持ってポケストを作ってくれるトレーナー仲間のみなさん、どうもありがとう。

 あ、でもね、ポケストの名前、ちょっといいかげんすぎると思うんですよね。ここは本当に地蔵堂(+大師堂)だったけど、地蔵って書いてあるから行ってみると、おもいっきり怖い顔をした不動明王が立ってたりすることがあるんですよー。

 わたしはポケモンGOも長くやってて、自分の知らない路辺のお堂などがポケストになってるのを見ると、わざわざ近くまで見に行ったりしてます。すごく楽しい!

 でも、お堂の中に弘法大師の像しかないのに、地蔵って書いてあったりすると、え、ちょっと、人違いっていうか、仏違いだし…? みたいな感じになってしまうし、それを見て育つ小さいお友だちとか、間違えたまま覚えてしまうんじゃないかな。

 みんなだって、ルギアって書いてあるのに行ってみたらヤドンだったなんてことがあったら、ヤドンはかわいいけど見たいのはルギアなんだよって思うだろうし、ヤドンなのにルギアルギアって騒いでる子供がいたら「は?」って感じでしょ(笑)

 ポケストはTL40になったら誰でも申請できるし、モニュメントの類いは案外申請が通ってしまうみたいなんですよね。でも、一度作ったものを修正するのは案外めんどくさくて、修正を提案しても無視されちゃったりするんです。

 仏像の名前なんかわかんないよってことなら「石の像」でいいだろうし、文字が書いてある石だったら「石碑」、建物だったら「お堂」とか「祠」とか、ざっくりと、どうにでもとれるような感じに申請してくださるとありがたいのですけど ^-^;

追記「虫除大師」について 2022年8月

 この番外さんには「荒行虫除大師」という名前がついてるんですが、一体それはなんなのかと思ったら、どうも愛媛県仙龍寺のお大師さまが虫除大師というらしいんですよね。

金光山仙龍寺奥院 | 集落活動センター松ヶ丘

金光山仙龍寺奥院は 本尊の金光山仙龍寺 をお祭りしており、本尊は弘仁6年(815年)空海弘法大師)が42歳の時に金光山仙龍寺を訪れ、そこに住んでいた法道仙人よりその地を譲り受け、厄除と虫除五穀豊穣の護摩修行を21日間行いました。修行満願成就の後に空海は自身の姿を刻んだと言われ、この本尊は「厄除大師」または「虫除大師」と呼ばれるようになりました。

 こちらのお寺は、もとは四国八十八ヶ所三角寺と同一だったそうなんですが、お寺が独立して場所が変わって三角寺奥の院ということになっているそうです。>仙龍寺 - Wikipedia

 というわけで、石川地内の番外は、愛媛県仙龍寺の写しとして作られたみたいですね。

弘法大師 空海 密教