二系統の南葛八十八ヶ所霊場

旧南葛飾郡に開かれた二系統の南葛八十八ヶ所を実際に回っています。

見分け方早分かり
いろは大師(北回り)|大心講|大正14年|一番は奥戸・善紹寺
南回り|弘山講|明治43年ごろ|一番は東小松川・善照寺
「名称について」も読む

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東葛西:梵音寺

 東葛西・梵音寺は南葛「南回り」の第十五番札所とされています。


【札所番号】
南回り:第十五番

謎(葛西):第二十三番

【札所名】梵音寺(曹洞宗

【所在地】

旧番地等 江戸川区長島町239
現在の地名 江戸川区東葛西2-28-16

# 旧番地等は昭和51年版の『江戸川区史』に載っている所在地です。
# 『江戸・東京札所事典』では所在地不明とありますが、葛西地域の梵音寺はここ。

【御詠歌(南回り15)】

【南回り次の札所】
第十六番、松江・東善寺
 #『江戸・東京札所事典』では松江とあり、南回り80番に由来するものは残っている。16番もここであるという確証がない。

第十六番、東葛西・東善寺
  # 順路的に矛盾がないのは東葛西。当ブログではこちらを推しますが、松江にも東葛西にも南回り16番にまつわるご詠歌の扁額などがないため確証はありません。


当ブログは二系統の南葛八十八ヶ所めぐりに注目して札所となっているお寺や神社を参拝しています。

「南回り」「いろは大師」という呼称については目次のページをご覧ください。



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東葛西・梵音寺(ぼんのんじ)
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境内のお堂。大師像あり。
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大師像の台座「新四国安産厄除大師 第二十三番」
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参道脇にある石碑。三行目に梵音寺の文字があるので札所関連ではなく当寺のために作られた御詠歌のようです。

 『江戸・東京札所事典』には「15番 梵音寺 江戸川区不明」とあるのですが、10番台は東葛西地域で続いているため、東葛西2-28-16 の梵音寺だと思われます。『事典』は平成元年に出版された本で、著者は昭和の中ごろから終わりごろにかけて資料をまとめていると思います。その頃の江戸川区は大規模な町名変更が行われていますので、旧地名を新地名に対応させることができず「不明」としたのではないかと思います。

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『江戸・東京札所事典』より南葛八十八ヶ所(南回り)の札所リストの一部

▲赤線でかこってある寺は本では不明となっていますが、東葛西地区にその名前の寺があります。青で囲ってあるのも正しくは東葛西地域の同名の寺と取り違えているものと思われます。

 というわけで、当ブログでは南葛八十八ヶ所「南回り」の第十五番は東葛西・梵音寺だと考えているのですが、こちらのお寺にも南回り固有のものは存在しないようです。

 境内のお堂はちょうど前が工事中で、かぶりつきで覗き込むか、離れた場所から参拝するしかありませんでした。堂内には石仏が何体かあり、そのうちのひとつが弘法大師像で、台座には「第二十三番」と刻まれいました。これは南回りのものではありません。近隣のお寺にあるのと同じシリーズで、昭和8年ごろに作られた別の霊場巡りのものでしょう。南回りのものならば「第十五番」と刻まれるはずです。>謎の札所(葛西〜船堀地区に集中)のリスト - 二系統の南葛八十八ヶ所霊場

 南回りは明治43年ごろに東京弘山講により開創され、一部の札所には明治45年に番号に対応した御詠歌の扁額が納められています。小堂内をガラス越しに拝見しましたが、そういったものは見当たりませんでした。

弘法大師 空海 密教